ジャパン・テキスタイル・コンテスト2018主な受賞作品

 ◆一般の部

 グランプリ(経済産業大臣賞)

























New Gabardine
小野 圭耶
東播染工㈱ 兵庫県西脇市

今回グランプリに選ばれた素材は、一見コットンギャバジンのベーシック素材と感じますが、まず触ってみて高密度且つ柔らかな上質感を感じハッとする存在感を感じました。何度もよく見たり触ったりしてみると、様々な生地のアイデアに気がついていきます。大きめのチェック風の柄がドビー組織の工夫によって薄っすらと見え隠れし、見る角度によって表面に奥行きを感じたりシンプル無地調に見えたりする「変化するデザイン」に魅力を感じました。ハードで上質なタッチの方向性と相反するヴィンテージなラフ感を表現できる塩縮加工を使い、自然なシワ感仕上げを選んだ部分にも今後の未来に求められるデザインのギャップ感があり、作者のモダンな感性を感じました。
すべてのこだわりの要素が非常にバランス良く構築されており、新しいシンプルのあり方やコットンの未来を客観的に追及していると思います。複雑なアイデアが重ね合っていますが、程よい見え方と目付の素材であり、様々な服への展開を見てみたいと思う素材です。


審査員長 梶原 加奈子

 準グランプリ(中小企業庁長官賞)



















ラバースキン
関戸 晃
中外国島㈱ 愛知県一宮市

毛織物をベースとしていますが、その特性を良い意味で裏切るような新しい価値を持った織物になっています。一見するとウールシャギーですが、触った時に感じる印象は元来のシャギーの毛の凹凸が残りながらも、その仕上がりは人工的でフューチャリスティックです。表面のハードさに対する裏面のソフトさ、ハーフカットシャギーが生み出すラフさに対するコーティングのソリッドさ、一つの織物の中に、表と裏、硬と柔、光と影、自然と人工、伝統と革新、そういった対極の要素が共存することで、多様性を孕んだ表現が生まれており、非常に今のダイバーシティーに富む時代を捉えていると評価できます。エシカルファッションとしての視点から見ても、今後レザーを代替する素材としての表現の可能性を感じます。

審査員 森永 邦彦

 新人賞














夜と波
白本 恵美
島田製織㈱ 兵庫県西脇市

播州ならではのよろけ織の素材により、独特の視覚的効果、触感を作り出している点を高く評価しました。朱子織の組織に光沢のあるキュプラを緯糸として波状に打ち込むことで、柄の部分は勿論、無地の部分にも控えめな斜文状の視覚的効果を作り出し、見る人の目を引き付けます。またキュプラとコットンによる吸放湿性、接触冷感、滑らかさは、快適な着心地をもたらします。ワンピースなど、このテキスタイルを全面に使用した衣類は非常にエレガントなものになり、ラグジュアリーブランドをはじめ広く訴求することができると思います。

審査員 篠原 航平

エコロジー賞













Tussah silk 2way Melton
杉山 俊
渡六毛織㈱ 岐阜県羽島市

落ちワタからメルトンが?!シルク高混率でストレッチ性のあるメルトンというだけでも充分に評価できる素材ですが、落ちワタを利用してリサイクル紡毛糸を紡績し、縮絨仕上げやストレッチ糸を駆使して製作されたこの素材は、絹の特徴である保温性、軽さ、柔軟性を兼ねそろえた時代性あるアップサイクル素材だと感じました。素材の機能だけでなくウェアとしての高級感も高まるため、あえてモッズなどのカジュアルアウターを作ると面白いと感じました。

審査員 横枕 芳美


◆学生の部

 スプラウト賞






















ミナモ
川村 真子
大阪モード学園

一見学生らしい明るい視覚表現に満ちた華やかな作品である。ただ作者の表現意図を見ると、そこにはその表現材料として廃棄されたプラスチックゴミを使用し、今世界で大きく取り上げられている海への環境汚染という問題提起もしている。手法としてそれらプラスチックを小さな断片としてスパングルに見立て、そのテキスタイルへの表現にオートクチュールに使用されるリュネヴィル刺繍の技法にてオーガンザの表面にリズミカルに散りばめている。そしてグランドのオーガンザの透明感を効果的にするのに加え、生地の薄さをカバーするためと考えられるが、キャンバス地の裏打ちをしてあり、それにもムラ染めの加工を施し、染色糸にて縁飾りまで使用し、隅々まで考えた手仕事の面白さを伝える表現となっている。環境問題を考えながら様々な工夫と技法を駆使し、このような豊かな手仕事表現に纏めた感性に脱帽です。

審査員 竹内 忠男